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『本家を見て来てほしい・・』と言う父・・
私達は、しぶしぶ本家を見に行きました・・
本玄関の門をくぐり、玄関の開き戸を
開けると・・雨戸で光が遮られた暗闇が現れたのです・・
暗闇の中にまっすぐと伸びた廊下・・
私と夫は、まるでお化け屋敷の通路を歩くように懐中電灯を照らしながら家の中をぐるりと囲む廊下を歩き、
すべての雨戸を開けて回わりました・・
半年ぶりにこの家に光が差し込む光景・・
窓を開け、風を通しました・・
仏間に行くと、叔父夫婦がここを離れる
時にお供えをした缶詰めが畳の上に転がっていました。
「ねずみの仕業かな?」と夫が言いました。
「そうだね・・」と呟く私・・
私達は家中を見て回りました・・
室内からは、湿気を帯びたカビ臭い匂いと、
木々の匂いが風が吹くたびに交互に
私の嗅覚を刺激しました・・
「今のところは大丈夫だな・・」と主人が言いました。
「そうだね・・」と持参した掃除道具で
軽く掃除をして、一時間半程滞在して本家を後にしました。
それから、私達は本家のことをすっかり忘れていました・・
ある時、父親から再度本家の訪問を頼まれました・・
内容が、『草木が生い茂り、下の家から苦情が出ているから、
もろもろのことを頼む!』でした。
父親の『自称高齢者』は本当のことで、
腰痛持ちでとても本家に続く長い石階段を
上がることができないことくらい私達も理解していました・・
私達は、父の提案の『高級焼き肉』の甘い言葉と引き換えに、
物凄く重労働になろうであろう
『本家の掃除』を引き受けたのです・・
物凄く沢山の掃除道具を抱え、私達夫婦は
本家の門をくぐりました。
玄関を開けると・・
暗闇の廊下・・
カビ臭い匂い・・
何より、玄関先にも雑草が生い茂り、
玄関が見えない・・
明らかに前回に来た時と異なる景色が
私達 二人の前に広がっていました。
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