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逆光の上に目深に被ったキャップで顔はわからないけど、申し訳なさそうな声が聞こえる。
聞き覚えのある声に似てる気がするけど…
こんなスタイルのいい知り合いはいない。
しかもふんわりといい香りがする。
いい香りに気を取られていると、何だか太ももの辺りに嫌な温かさが広がる。
「ありゃりゃ。オシッコしちゃったね。グリちゃん、何がそんなに嬉しかった?」
しっぽをぶんぶん振りながら、まだほっぺを舐めている。
何だろうな、動物とこどもには好かれるんだよな〜
「え!着替えとか…いやそんなの持ってないか…どうしよう…」
風貌に似合わずブツブツと呟きながら、グルグルと同じところを歩いている。
「大丈夫ですよ。このワンピ縁起悪いし、正直もう着たくないし」
「でも、ここで脱ぐわけにはいかないですよね」
「さすがにそれは…(苦笑)」
「ウチに来てもらうのはまずいし…スマホ置いてきちゃったしな」
またブツブツと呟きながら歩き回る。
私はグリちゃんと戯れながら、どうしようかな〜と暢気に考える。
「あっ!!」
と突然声を上げて、彼は散歩グッズが入った小さなバッグの中を探し始める。
「やっぱりあった」
と嬉しそうな顔をして、私に言った。
「すみませんがスマホお借りできませんか?」
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