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5
——待ってろよ、和穂。
電車に乗っちゃう前に、届けてやるからな。
冬の冷たい空気を切って、狭い歩道を駆け抜ける。
和穂が忘れ物に気づいて家に向かっている可能性もないことはない。
万一行き違いになることを避けるために、周囲に目を配りながら走った。
通行人を避けながら、薄汚いアスファルトの上を突き進む。
急ぎながらも、人や車にぶつからないように、十分気をつけながら走っているつもりだった。
だけど事故ってやつは、どんなに注意していても完全には防げないものらしく。
「うわっ!」
横断歩道を渡る途中、右の肩と膝に強い衝撃。猛スピードで突っ込んできたオートバイだった。
バランスを崩した僕は、まともに受け身を取ることも叶わず歩道に叩きつけられた。
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