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「え、誰?」
びっくりして周囲を見渡す。誰もいない。
けれど、どういうわけか相手にも僕の声が聞こえているらしく、返事が返ってきた。
『私はカミです。君たちの創造主といってもいいでしょう』
「カミ? 創造主?」
なんのことだか、わけがわからない。
『覚えていないかもしれませんが、君も、君の大事な妹さんも、私の手によって作られました』
なんの話だ。
僕は神様なんて信じてないぞ。
こんなのきっと、ストレスか何かのせいで聞こえてきた——
『幻聴ではありませんよ』
「な、なんでわかるんだよ!?」
『当然です。君は私の作品の一部。考えていることは全てわかります』
ふふふ、とからかうような笑い声。
『さて、本題ですが、君は妹さんを追いかけるつもりですか?』
「……そんなの訊いてどうするんだよ」
『君も望んでいるのでしょう? 彼女の恋が実らないことを』
「…………」
悔しいほどに図星だった。
僕は、妹の恋を応援できない。
和穂は大人になって絶対的信頼の置ける相手と結ばれるまで、僕が大切に守るんだ。あんないけ好かない男に和穂を渡すわけにはいかない。
僕の内心を読んだらしい『カミ』がまた『ふふふ』と笑う。
『やはり彼女の恋を応援しかねるようですね。ならばそのプレゼントを届けてあげることがほんとうに正しいのか、少し考えた方がよいかと』
正体不明の存在に内心を読まれて気味悪いったらありゃしないけど、こいつの言っていることは間違っていない。
和穂と男がこれ以上うまくいかないように、プレゼントは家に置いておこう。
そう考えて僕は、紙袋をテーブルの上に置いた。
『ふふふ。賢明な判断です』
満足げな言葉を最後に『カミ』の声は止んだ。
……何だったんだ今のは。
わからないけれど、とりあえず、僕の選択は間違っていない。
間違っていない、はず。
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