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それから5分ほど、どうにも気分が落ち着かなくて、一人でリビングをうろうろしていた。
たぶん、この忌々しいプレゼントが視界に入るせいで気持ちが乱されるんだ。
そう考えた僕は、テーブルの上の紙袋を掴んで、和穂の部屋へ向かった。勝手に部屋に入ったと知ったら和穂はブチギレるだろうけど、どうでもいい。こんな目障りな忘れ物をする方が悪いんだ。
冷たいレバーを下に押し、ドアを開ける。
目の前に広がった光景に、僕は息を呑んだ。
まず目についたのが、ベッド横に貼られた韓国アイドルのポスター。
それから、部屋のあちこちに散りばめられたプリクラの大群。
こんなの、和穂の部屋じゃない。知らない女の巣窟だ。
毎晩シナモンのぬいぐるみを抱きしめてスヤスヤ眠っていた僕の妹はどこに消えたんだ!
さっさとプレゼントを置いて逃げなきゃ。こんなところにいると僕まで人格が破壊されてしまう。
紙袋を壁際に捨ておこうとした時、ふと目に入ったものがあった。
意外にもきれいに片付けられた勉強机の上に、数枚の原稿用紙。
国語の宿題か何かだろうか。
いや、原稿用紙だからといって宿題だとは限らない。
まさかとは思うけど、あの男に向ける痛々しいポエムを書いたりしてはいないだろうか。
監督責任を果たすため、僕は勉強机へと向かった。内容によっては、その場で原稿用紙を食べてしまう覚悟だってできていた。
恐る恐る手に取った原稿用紙の右から1行目には、【私が感謝している人について】とタイトルが書いてあった。2行目の下の方に和穂のフルネーム。やっぱり宿題だろうか。
ポエムではないらしいことにほっとしつつ視線を左に動かした僕は、本文を読んで目を見開いた。
【私が感謝している人は、兄です】
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