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守り神の咆哮
クオンはまた話を加えた。
「チョウ様は、無闇に人間を食すような化け物ではございません。時折敵側の人間を喰らうようなことはございますが、それは人殺しに堕ちた者に対する救いなのです」
雄介はクオンの言葉に何やら怪しい宗教的な雰囲気を感じ取り、背筋が寒くなった。しかし、あの守り神が無差別に人を喰らうわけではないと知ると安心した。
雄介は化け物が草原を越えた小高い丘の上に登っているのを見た。遠くからでもよく見える厚みのある肉体。がっしりとした太い両腕と両足。真っ直ぐに前を見つめる凛々しい犬の横顔。
出逢った者全てを萎縮させる猛々しい獣の姿だ。しかし、雄介はそれに対して恐怖というよりもむしろ神聖な雰囲気を感じた。両手で四角形を作り、守り神の力強い姿を収める。ここにカメラがあれば、と雄介は悔しく思った。
守り神は咆哮する。無差別な虐殺を繰り返す者たちに、未来を奪われ悲しみのうちに死にゆく者たちに、そして未来のために闘い続ける者たちに。
雄介とクオンの2人は他の兵士に呼ばれるまで、いつまでもその光景を見つめていた。
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