17 嫉妬

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17 嫉妬

 同じ男なのにこれでは本当に処女を相手にしているみたいだ。そして男のものを見たことがあると言われても困るとも思った。  ダウワースの頭の中をかなり不敬な考えが過ったが、ここは二人きりの閨の中。きっと何を聞いても許される。この期に及んで腰の引けたアイユーブを逃すまいと寝台の縁の方に追い込みながら小さな身体を潰さないようにゆっくりと伸し掛かっていった。 「神子様は……」 「えっ」 「神子様は貴方にどのようにふれたのですか?」 「それは……」  言葉を濁して目線を反らして口を噤むのを許すまいと、強めに手首を握り、そのままほっそりした腕を片手で頭の上で戒める。 「男のものを触られたって言ってましたね?」 「ひぃっ」  ダウワースのシャツ一枚だけを着せられた下半身は無防備でしかなく、下の方のボタンを締められていないせいで折れそうに細い腰と臍の辺りが丸見えにめくれ上がっている。  掴んだ左の足首の手の指の回る儚い細さに嗜虐的な欲望がせり上あがる。そのまま大きく足を自分に向かって開かせていった。  スィラージュにご丁寧にここまで変化させられ下着はあの蠱惑的な薄絹と同じ色合いのようだ。月明かりしか射さぬ部屋では、黒く細い紐のような下着から真っ白な臀部ややや兆しはじめた部分が透けて見えて幼い人よりも如実に男を誘ってくる。  腰の部分の紐に手を伸ばせばほろりとすぐに解け、もしもあの時師がスィラージュを選んでいたならば、愛らしくも妖艶なこんな姿をあの男の前に晒し貪られていたのかと思うと嫉妬で胸が焼きつきそうだ。 「ダウワース、お前」 「怖いですか?」 「顔つきが、いつもと、違う」 「ああこれは。貴方に欲情しているから」 「ひぃっ」  そんな風に素朴に呟かれ、ダウワースは悪辣な笑みを口元の這わせた。そしてそのまま下着をアイユーブの片足の太ももまでずりさげ、中心に手を伸ばす。 「あっ、ああ」 「ほっそりしていて、すべすべで。確かにこれは俺ものとは違う。アイユーブはどこもかしこも滑らかで、綺麗だ。でもきちんと剥けてる。誰にしてもらったの?」  ふるふると首を振るアイユーブの必死の沈黙が答えである気がした。 「神子様もこうして貴方に触れたんですか? 貴方のここを大人の形に変えて、貴方も神子様の……」  剣を握る大きなダウワース掌の中に大部分を納められる陰茎を包み込み緩くしごくと、そう何度も動かさぬうちにアイユーブの腰は跳ね上がった。  いっそいつもの彼のように大きな声を上げて果てるかと思ったが、静かにびくびくっと小刻みに身体を震わせる。 「アイユーブ?」  再び涙がぷっくりと浮き上がってきた両の目で、アイユーブがダウワースの顔を睨みつけてきた。 「また声が出ないんですね」  こくんと頷いた拍子に涙が伝う顔が美しい。そして可哀想なのにもっと苛めてしまいたくて堪らなくなる。顔をゆっくりと近づけていき、機嫌を損ねたアイユーブがそれでも蜜を啜ろうと差し出す柔らかな舌をダウワースは唇で食み、唇の柔らかさを軽く触れるくすぐったくも感じるもどかしい口づけだけして顔を離していく。  案の定治癒を期待していたアイユーブは見る見るうちに涙を零して細い脚でダウワースを蹴り上げてきたがそんな抵抗は赤子のそれに等しい。 「共寝の時にここに指を含まされたりは?」 「っ!」 「答えられないなら、確かめてみますね」  返事が出来ぬのをいいことに、アイユーブの足をさらに大きく開かせて、彼が先ほど達したもので滑る指先を窄まりを探り、一本だけ含ませてみる。  声もなく震えるアイユーブが真っ白な足先でまたダウワースを押し返そうとしたので一旦指を引き抜いた。 「ああ、貴方の中は狭くて、私の指一本でもきついぐらいだ。今日は止めますか? 急ぐこともないでしょう?」  するとアイユーブは月光に青みがかった輝きを放つ髪もろとも首を横に振った。 「じゃあ、師匠もきちんと協力してくださいね? いやいやしないで」  また幼子のように頷く。言質をとったと、男は仄暗い心を隠しいつも通りの穏やかな笑顔でアイユーブの目の端に伝った涙の痕に口づけた。 「じゃあ、上手に後ろで達せられるように、俺を受け入れても痛くないほど、ここを蕩けさせてあげます。大丈夫。傷ついたらすぐ俺が治癒の力を送ります。怖いことなんてないです」  そういいしな、ダウワースはアイユーブの膝裏に手を入れると腰が浮くほど持ち上げる。男の顔の前に全てを晒され恥ずかしさのあまりアイユーブはまた男の手首を握り爪を立てたが、ぎりりっと足を握る手に力を込められ、暗に先ほどの約束を仄めかされる。  硬く閉ざされた蕾を綻ばせようと男が硬く先を尖らせた舌をねじ込んできたから、アイユーブはぞくぞくする慣れぬ感覚に鳥肌を立て、飲まれそうになりながらもまた髪を振り乱していやいやをする。
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