18 情事

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18 情事

(そんなとこ、汚いから、やめろ)  その心を見透かすように、ダウワースが一度顔を離して嗤う。 「さっき魔力流して綺麗にしたでしょう? ふふ。師匠、俺もね? 洗浄魔法、最初に覚えたがったクチですよ?」  急にそんなことを言われてアイユーブはどうしていいのか分からず、きっ、とダロワースを涙目で睨みつける。 「嫉妬してくれるんですか?」  大きく開かされた足の向こう、また立ち上りかけるものごしに見えるアイユーブは、涙を滲ませ、震える唇を小さく噛みしめている。その顔があまりに良くて、ダウワースはたまらなくなった。 「何その顔、最高ですね。もっとぐしゃぐしゃにしてやりたい」  ぶわっと涙が零れる。ダウワースはそれを腕を伸ばして拭ってやると、元の優しい男の笑顔を見せるが、アイユーブは騙されないぞと警戒している。 「嘘です。言ったでしょう? 俺、学生の頃、解呪を押し付けられて泥まみれやずぶ濡れになることが多かったんですよ。だから早めに覚えたんです」  ダウワースがアイユーブの身体の上から一度身を起こしたから、これ以上怖い男になってくれるなと見張るようにその動きを目で追いかける。  すると魔力をランプ型の魔道具に向けて放って月明かりよりやや強い光源を部屋の中にも灯らせた。  その明かりを頼りに普段はアイユーブの髪や身体の手入れの為に彼が取り寄せた、見た目も香りも一級品の化粧品の瓶たちの中から、薄紅色の小瓶を手にとる。そのまま美しい装飾の施された小瓶の蓋を引き抜き、タップリとその手に伝わせる。 「アイユーブ、しっかり足を開いていて、自分の手で持って押さえるんです。協力してくださいね」  急に明るくなって互いの姿がよくわかるようになり、アイユーブは恥ずかしさからランプを消すための魔法を放とうとしたが、酒に酔っているせいなのか、それとも呪いのせいなのか、上手く集中ができない。  しかたなくおずおずと自らの膝裏に手を入れる。日々可動域を意識して身体を解しているから股関節は柔らかく開いて苦ではない。  師のやったぞ、とでもいうようにつんっと唇を突き出す顔は可愛らしかったが、そんな淫らな命令をされても、「協力」の一言で従順になる師が素直すぎて憐れなほどだ。その一方でまたぞろ、妬心が湧く。 「……神子様にもそうして素直にお答えしていたんですか? さあ、アイユーブ足を開きなさいって命令されて」  片手をついて覗きこんできた男の端整な顔にまたあの翳りをみて、アイユーブはほとほと困り果ててしまった。いやいやをしたら怒られて、素直になったらこの顔だ。  眉をすっかり下げたアイユーブの唇を塞ぐと、唇を押し付けながら伸し掛かった姿勢のままで香油まみれの指を再び蜜壺の中に埋めていった。 「また苛め過ぎました」  探るように指を奥までいれられ、ゆっくりと傷つかぬように引き抜かれる。 「声をだせないのも、つらい?」  アイユーブがぐったりとしたまま僅かに頷くが男が攻める手を緩めることはない。たまによいところを掠める切ない感覚がなになのか分からず、腹の中をまさぐられる感覚にも慣れず。この情動を声を上げて逃したいが唇を離されても声がでない。はくはくとただ息をつくだけだ。 「アイユーブ、雌イキ、後ろで極めるって何って聞いたよね」
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