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狂いだした人形
家に着いて、私はパパとママに見てもらった。体は壊れてなかったけど、喋れる機能は壊れてしまったみたい。パパもママもエメリーを励まそうとしてくれたけど、ずっと落ち込んだままだった。大好きだった外遊びには行かなくなってしまった。エメリーは私とお家で遊ぶ事が増えた。元気がないエメリーを見ているのは悲しいけど、エメリーがずっと傍にいてくれるのは嬉しい。
✱
──1週間後───
ジョン「エメリー、アングレカムを貸して。プレゼントがあるんだ。」
エメリーは私をパパに渡す。パパは後ろを向いて座るとビニール袋から何かを取り出す。そして私の胸についたチップを付け替えた。
パパはエメリーの方を振り向いて
ジョン「…エメリー、アングレカムに何か話してごらん?」
エメリー「アングレカム、お話…出来る?」
アングレカム「出来るよ」
エメリーの顔がぱぁっと明るくなった。
エメリー「パパ!ありがとう!!」
エメリーは私とパパに抱きついた。
やっぱり落ち込んだ顔より笑顔が1番だよね!エメリーの笑顔が見れて嬉しい!
…でも、そう思ったのが間違いだったのかな
✱
チップを交換した後、私の喋れる言葉もお話しすることで出来た性格もリセットされてしまった。最初は一生懸命お話して同じような性格にしようと思ったみたいだけど、少し変わってしまったみたい。その後、エメリーは外遊びに行くことは増えたけど、私を一緒に連れて行くことは無くなった。
✱
──2051年──
エメリーは10歳になった。エメリーは授業で習ったダンスが楽しくてダンスクラブに入った。日に日に遊ぶ時間も減ったけど、一生懸命家でも練習している姿を見て、応援していた。その頃から私の定位置はベットからタンスの上になっていた。
✱
──2053年──
エメリーは12歳になった。エメリーはスマホっていう小さな機械を買ってもらったみたい。家に帰るとそればかり見るようになった。私の事は見てくれなくなった。
エメリー、そんな小さな機械、何が楽しいの?…いらない。邪魔。私がそう思っていると
エメリー「ママー!携帯壊れた!画面がおかしい!」
そう言って部屋から出ていった。
え、嘘…やった!願いが通じた!私はそう思った。しばらくしてエメリーが部屋に帰ってくると、違うスマホを持っていた。安心した様子だった。…何も変わらなかった。
次の日、エメリーはミアと楽しそうに電話していた。とても不快だった。ミアなんて居なくなればいい。そう思った。
『ププププーーー!!ドン!!』
電話越しにとても鋭い音が聞こえた。
エメリー「ミア!!ミア!!何があったの!?」
楽しそうだったエメリーの表情が一変し、血の気が引いてとても焦っている様子だった。
──その日の夜、ミアは亡くなった。
エメリーは再び、引きこもるようになった。
表情はとても暗いが、私をまた抱きしめてくれるようになった。嬉しい。毎日泣いている。可哀想なエメリー。食欲も減り、学校も行けなくなった。パパもママも心配していた。
エメリー「アングレカム…ミアが…ミアが死んじゃった…。淋しいよ。悲しいよ。」
アングレカム「大丈夫、私はずっとそばにいるよ。」
エメリーを励ますと、私を泣きながら抱き締めてくれる。その温もりが暖かくて、懐かしくてとても幸せだった。
…でも、長くは続かなかった。
✱
─1ヶ月後、ママからエメリーに1冊のファイルノートが渡された。見るとクラスメイト全員からの励ましのメッセージカードが挟まれていた。
男子1『辛いと思うけど、頑張れ!』
女子2『ミアが亡くなって私も悲しい。エメリーもいないのはもっと寂しいよー!』
女子3『エメリー、一緒に頑張ろう!』
男子4『無理するな。でも、いつでも戻ってこいよ!』
などが書かれていた。
クレア「エメリー、これは貴方が学校に行かなくなってから、クラス全員で励ますために考えた物なんだって。ルークが朝、届けに来たのよ。後、携帯見て欲しいって言っていたわ。」
ミアが亡くなってからエメリーはスマホを見ていなかった。エメリーが久々にスマホを見ると友達からの沢山のメッセージが届いていた。エメリーはそのメッセージを1つずつ読んで泣いていた。
次の日、エメリーは学校へ行った。数日後、また明るいエメリーに戻っていった。私はまた1人になるのが嫌だった。
…私は願った。メッセージを送った全員がいなくなればいいと───。
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