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人形と少女
─1953年フランス─
賑わいを見せる道路から少し離れた路地にある小さな人形屋。夕方、急な雨が降り始めた。数分後、カランカランと店の扉のベルが鳴る。エメラルドグリーンのニュールックを着た30代くらいの女性とチェリー色のワンピースを着た10代くらいの少女が店内に入って来た。
女性は少女の方を見て
「今日は誕生日だから新しい人形を買ってあげる。」
と言うと少女は目を輝かせて店内を見始めた。
6畳程の小さな店内。装飾品はロココ調でテーブルや棚にはドールハウスの他、様々な色のドレスを着た球体関節人形たちが飾られていた。また、洋服・小物なども奥のテーブルに綺麗に並べられていた。
少女は一体の人形に目を惹かれる。
美しいドレスを身にまとった人形達の中に、一体だけ町娘の様なクロスパールとシーグリーンのワンピースを着た人形がいた。腰まで長く美しいホワイト•レドの髪、グリーンターコイズの瞳をした人形だった。
「私、この子が欲しい!」
と人形を手に持ち、女性に駆け寄る。女性はその人形を見て
「わかったわ。大切にするのよ。」
そう言って少女から人形を受け取り、レジへ向かった。
✱
少女の名前は「ベレニス」という名だった。ベレニスは、その人形に「レオニス」そう名付けた。
ベレニスは、レオニスをとても気に入りどこに行くにも何をするにも一緒だった。
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