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セシルとアダン
──話し合いから2週間後──
仕事が休みなので朝から競馬場に来た。
セシル「…チッ!今日もハズレかよ。」
結果はハズレだった。昼前に持ち金がなくなりそうなので、帰ろうとしたら後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
???「おーい、セシルー!」
俺は後ろを振り向き眉を顰める。
近づく相手は少し小太りの壮年だった。
セシル「…アダンか!最近見なかったが、お前どうしてたんだ?」
アダン「久しぶりだね。今日もいい情報を手に入れたんだ!どうだ!買わないか?」
アダンの情報は、時々当たるが外れることが多く、信用していない。
セシル「お前、忘れたとは言わせないぞ!前回ボロ負けだったんだからな!その後姿をくらませやがって!今回は絶対買わないぞ!」
俺が殴りかかりそうな勢いで面罵するとアダンはビビりながら話を続けた。
アダン「ぜ、前回はごめんよぉ。今回は詫びを兼ねて来たんだ。そう怒らないでくれ…。前回はかなり俺もやばい状況だったんだ。わかってくれよ。その代わりあんたにだけはお得意様として特別な情報を持ってきた。」
セシル「…またそうやって騙すつもりだろ。」
アダン「ちっ、違うよぉ!信じてよぉ!…お代は当たってからでいいからさ。…コソコソ…」
アダンはそっと俺に近づき耳打ちをしてきた。
セシル「…本当か?」
アダン「本当だって!嘘じゃないよぉ!今回はいつもより俺も支払ってるんだ。嘘だと俺も困る!」
セシル「…いや、お前が困るのは知らん。」
アダン「もぉ。セシル酷いよぉ。…それで?今回あんたは乗るか?…乗らないなら別のやつに話すが。」
セシル「…悪い。今回はパスだ。」
アダン「ノリ悪いなぁ。残念だよ。じゃあね」
アダンはくるっと俺に背を向けた。
セシル「あ、アダン。ちょっと待ってくれ。」
アダン「なんだよ。」
セシル「その爺さんについて聞きたいんだが…」
アダン「あ!ダメだよ!直接聞くのはタブーだからね!僕、セシルと縁切るよ。」
セシル「違う。そいつ、人形に詳しいか?」
アダン「詳しいよ。何せ人形集めが趣味だから。」
セシル「そいつに見せたい人形があるんだ。居場所を教えてくれないか?」
アダン「…前回のこと、チャラにしてくれる?」
セシル「…わかった。してやるから教えてくれ」
アダン「ありがとぉぉ。じゃ、特別だからね!…コソコソ…」
セシル「わかった。ありがとう。」
アダン「いい結果、期待してるよ!またね!」
アダンは笑顔で手を振り走っていった。
セシル「いい結果って後から金を取る気だな。あいつ…。」
俺もその場を後にした。
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