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ニークヴィスト領を迂回するルートだと山へ登らなくてはならなくなり、そうなると気温の変化が激しく、また日数も三倍にかさんでしまうため『生花』が商品のクラウリー家としてはなんとかこのままニークヴィスト侯爵家から目をつけられ過ごしたい……のだが。
「流石に最近は一段と酷いな」
まだ何かを買ってこいだとか、手紙の代筆を頼まれるくらいは良かった。
毎回「俺たちトモダチだろ」なんて口上を述べられるのは少々不快だが、それでもその程度。
幼い頃から領地の都合上よく一緒に遊ばされたニークヴィスト侯爵家の三男、ベネディクトは同い年の俺を便利なおもちゃだと判断していたるところで便利に使ってきたが、それでも家のためだと思えば耐えられた。
むしろ段々何も感じなくなっていた。
もちろん煩わしいが、だからといってそれがどうした。
爵位を継ぐ兄の足を引っ張るつもりはなく、適当に使われておけばいい。
そうずっと思っていたけれど。
『婚約した相手と親睦を深めてこい』
……は、ないよなぁ。そう思うとさっきより大きなため息が漏れ、項垂れてしまうのも仕方ないだろう。
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