429人が本棚に入れています
本棚に追加
どんなに彼女が気になったとしても、実際に結婚するのは俺じゃない。
俺はベネディクトの身代わりとして彼女に八つ当たりされるために送り込まれただけのただの人形だった。
“ベネディクトの予想に反して俺が八つ当たりされることはなさそうだが――”
それはあくまでも無関係な俺だからで、ベネディクト本人相手だと怒りを露にするのかも、と考えツキンと胸が痛み少し驚く。
“?”
その痛みの理由に気付くのを恐れた俺はその日それ以上考えずにさっさと目を閉じ眠ることにした。
「こっちの問題もなぁ……」
うーん、と唸りながら睨むのは研究用に育てた生花だ。
“立地は変えれないが、納品に時間がかかっても問題がない生花を作れたら”
交配して環境変化に強い花を作ることも考えたが、結局満開の花を売るためには蕾の状態を確認して出荷するしかない。
そうすると、どれほど環境に強くても意味などない訳で。
「長期間咲き誇っている花を作れれば……」
凛と花開いている目の前の生花が、ふと一人で凛と立っているアルベルティーナ嬢に重なる。
彼女はいつも俺に作り物の笑顔を向けていた。
最初のコメントを投稿しよう!