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「本心からの笑顔なら良かったんだけどな」
所詮身代わりの俺にはその程度なのだろう。
あんなに面倒だと思っていた涙でも、さっさと罵倒して終わってくれと思っていた怒りでも構わない。
彼女からの『本当』が欲しくなってしまっていることに気付き乾いた笑いが俺から溢れた。
「そもそも俺が偽物なのにな」
わかっているのに彼女から本当の感情を向けられたいと思う俺が一番滑稽で醜い。
横恋慕なんて不毛なことしたくないのに。
“せめて本物に見える偽物の笑顔なら”
なんて浅はかにも願い――
「本物に見える偽物か」
ふと何かに引っ掛かる。
「造花なら枯れないしずっと咲き誇ってるな」
けれど、生花栽培を生業にしているクラウリー家が造花事業なんて、余りにもプライドを捨てているかとも悩み……
「……生花を使って造花を作れば」
一番美しい状態で、例えばガラスに埋めるとか。
“いや、溶かしたガラスが何度だと思ってるんだよ”
ならガラスの代わりに埋められる何かはないか?
ドライフラワーをそのまま一輪として飾ることは出来ないか?
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