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いっそ押し花にしてから立体に組み立てるのはどうだろう。
小さなきっかけを得た俺は、まだ見ぬ事業に胸を弾ませる。
「彼女に感謝しなくちゃな」
新事業のキッカケを得た俺だったが、それが形になるまでは相変わらずベネディクトの『便利なオトモダチ』の自分に辟易する。
以前なら心を無にし、何も感じなかったのだろうが、何も感じてないように振る舞う彼女に毎月会うのが辛くもあった。
せめて一つくらいは誠実に、ときっかり十分前に訪ねることを徹底してエングフェルト公爵家へと毎月向かう。
気付けばそんな俺に合わせて、毎月きっかり十分前に彼女も待っていてくれるようになって。
“もし俺が本物だったら”
そんな浅はかな願いが拭いきれずに俺の心を締め付けた。
――もし俺が本物の婚約者なら、色んな所に出掛けてみたい。
彼女が興味を惹かれるものを探し、変わらない彼女の表情を俺の手で変えられるなら。
まだ成人もしていない彼女があまりにも大人っぽく振る舞う、そんな状況を全て壊して年相応にはしゃぐ彼女を隣で見守る。
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