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「虚勢を張るのは、自身の両足で立っていたいからでしょう。どの花も立派で、美しいです」
余りにも拙い慰めに項垂れそうになる。
筋の通っていない俺の言葉はただの羅列で、きっと誰にも響かないのに。
「……そうね、素敵かも。虚勢だって、悪くないものね」
俺の言葉を拾い上げるように、彼女がそう肯定してくれただけでうっかり泣きそうになってしまった。
心を殺してきたつもりの俺こそが、実は追い詰められていたとでもいうのだろうか。
“情けないな”
泣かせてあげたいと思いつつ自分が泣かされそうな現状に苦笑した俺は、アガパンサスの花に再び視線を戻して。
“花言葉は、『恋の訪れ』か”
このあまりにも滑稽で迂闊な恋が実るなんてあり得なくても。
見て見ぬふりをするには痛みすぎる胸に苦笑して。
せめて彼女がこのまま凛と立ち続けられるようにと祈ったのだった。
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