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1.身代わりですか?お可哀想に
「……そろそろかしら」
月に一度、私の婚約者であるベネディクトと共に過ごす茶会の時間が迫る。
今月も開催場所は我がエングフェルト家の温室で、ガラス張りにされた室内には小さなテーブルと椅子が二脚。
誰もいないのをいいことに椅子にもたれて思い切り伸びをしながらハーフアップにしたミルキーベージュの髪を払った。
「今日も可愛い髪型だわ。……見せる人はいないけど」
“約束の時間まであと十分”
こっそりポケットに忍ばせていた懐中時計で時間を確認した私は、時計の針が約束の時間のキッカリ十分前を示していることを確認して椅子から立ち上がると丁度エングフェルト家のメイドが扉をノックした。
「アルベルティーナお嬢様、ご婚約者様……の、代理の方がいらっしゃっております」
「お通しして」
慣れた様子で温室に足を踏み入れた彼がサッとお辞儀すると、右耳だけかけていた黒に見える濃紺の髪がさらりと頬に落ちた。
「アルベルティーナ・エングフェルト公爵令嬢にご挨拶いたします。レヴィン・クラウリーです」
レヴィン様の挨拶を聞いた私もスカートを軽く摘みカーテシーをする。
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