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太陽光のたくさん入るこの温室で見ると、彼の濃紺の髪が陽に透け淡く輝く。
その色合いが相変わらず美しくて気に入っている私は、お辞儀しながらこっそりと盗み見ていた。
「ベネディクト・ニークヴィスト侯爵令息は本日急な仕事の為この場には来れないとの事。その旨を伝えに参りました」
「存じ上げておりますわ、何しろこれでもう……何回目かしら?」
「四十六回目です」
“ほぼ四年!”
自分で聞いたものの、その数の多さに愕然とした。
「もうそんなになりますの?」
「なりますね」
思わずため息を吐くが、それも仕方がないというものだろう。
“というか、ため息を吐きたいのはレヴィン様の方ですわね”
何しろ彼は婚約を結んでからの四年間、毎月欠かさず代理として私の身代わり婚約者の役割をしているのだから。
「代理とはいえ、こうして毎月私と会っていてはレヴィン様の結婚が遅れてしまいそうですわね」
いくら政略結婚が主の貴族であっても、毎月別の令嬢と茶会を重ねる婚約者を望む貴族令嬢なんていない。
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