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彼に聞こえないくらいの小声で思わず呟いてしまう。
会話の弾まない、そして弾ませる必要のない茶会での時間を淡々と過ごす彼をぼんやりと眺めながら、私はそんなことを考えていた。
貴族にしては珍しくとても愛し合っているエングフェルト夫妻。
そんな彼らの長女として生まれた私だが、私を生んだ時に母が身体を壊してしまった為エングフェルト公爵家に第二子は望めなくなってしまった。
貴族夫人として、嫡男とスペアに当たる次男を生まなくてはならないという義務を果たせなくなった母だが、それでも私を恨まず愛情いっぱいに育ててくれたと思う。
“それはもちろんお父様も――”
だが、両親から大事にされればされるほど、私のせいでこの家にマイナスを与えてしまったことが引っかかるようになってしまって。
“だから、私はベネディクトとの婚約を決めたのよね”
レヴィン様を毎回代理で送ってくる婚約者のベネディクトと出会ったのは、四年前のデビュタント。
家に与えてしまった損失を少しでもカバーすべく、必ず条件のいい相手と婚約を結ばなくてはというプレッシャーから頑なになっていた私。
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