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50 汗拭き係?
オフィーリアが剣技の授業を見学するために闘技場に向かったのは2時間目の真っ最中だった。
『ヒューイさまッ素敵ッ!』『お強いですわッ』『ああっ流れる汗を拭いてあげたいッ』『きゃああああ~~♡』
「ひぇ」
・・・自分が応援側に来る事などアンドリュー王子の試合以外にはあり得ないため、乙女が口々に叫び声を上げるのに、若干引いてしまった。
試合中のヒューイに目を向ければ、口元をニヤつかせながら、1人の子息を往なしているのが目に入る。
成る程自分もあのように見えていたのかと納得するオフィーリア。
彼女の剣技はどちらかと言うと帝国流であり、そのせいもあってヒューイと似たような動きをする。
「確かに優雅に見えるわね・・・」
動きは優雅に見せているが、コレは元々剣舞用の動きだ。
本気を出す時は卑怯な方法も使うのが帝国流であり、この国の剣技とはちょっと違うのだ。
「知らぬが花って云うのにねぇ」
フムフムと顎に手を置き納得したが、ふと入場口辺りに異物を発見した。
「? 何で王女があんな所にいるのかしら?」
特徴のあるピンクブラウンの髪の毛は見間違える筈はない。
彼女は何故か白いタオルを両手で握りしめたまま棒立ちになって試合をガン見しているが、顔色があまり良くないような気がする。
「両者、ソコまでッ」
審判の声が響き、
『きゃああああ~~~~~♡』
と黄色い声が響く中、ヒューイと令息が互いにお辞儀をした。
彼らは何かを話し合いながらベンチに向かうが何故かヒューイだけが方向転換して、フロイライン王女のいる出入口に向かう。
「え?」
白いタオルで、王女が何故かヒューイの汗を拭っているのが目に入って仰天するオフィーリア。
「一体何が・・・」
よく見れば笑顔なのはヒューイだけで王女の顔が若干引き攣っているような気がする・・・・
「え。ひょっとして・・・」
ニコニコ笑うヒューイが何かを囁くと首がもげるんじゃないかというくらいブンブンとうなずく王女。
次に何故か王女はプルプルと横に首を振るが、何故かヒューイが彼女をエスコートするように手を差し出し、王女がその手の上に自分の指の先を置いた。
そのまま出入口の中に消えていく2人・・・
「何やってんのかしら?」
呟くオフィーリアの直ぐ後ろから
「よう、リア。俺の試合見てた?」
振り返ると、緑色の競技服を着たヒューイがフロイライン王女をエスコートするように手を取り、立っていた。
ヒューイはいつもの嘘くさい(オフィーリア談)笑顔だったが、フロイラインの方は表情が抜け落ちていた・・・
「ヒューイ・・・彼女どうしたの?」
訝しみながらハトコに問いかけると、
「ん? ああ、ピンクちゃん? 俺のタオル係に任命したの。毎回汗拭いてくれることになったんだよねッ♡」
フロイライン王女の顔を覗き込むヒューイ。
「は、はいぃ。そうですの」
「・・・汗?」
「そ。じゃあピンクちゃんまたね。イイコでお座りして待っててね♡」
何故かコクコクと頷きすぐ近くにあるベンチにそそくさと座るフロイライン王女。
やっぱり顔色はよくなさそうである。
「じゃ、俺授業に戻るねえ」
ヒューイは颯爽と去っていったが、残された王女はガクガク震えているように見える・・・
オフィーリアは首を傾げた。
「何があったのかしら?」
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