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52 坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、という訳でもない①
「ヒューイがどうもフロイライン王女を気に入りましたわ」
王太子オースティンがオフィーリアの報告を聞いて手に持っていた書類をバサリと落とし、床に散らかした。
周りの側近達もそのセリフに呆然としていたが王太子の失態をカバーすべく、そそくさと部屋中に散らばった紙を拾い集めている。
「え? 仕事のし過ぎで耳がおかしくなったのかな? ねえ、君。侍医を呼んでくれる?」
声を掛けられた側近が、首をプルプル振って、
「殿下、聞き違いでは無いと思われます」
と真剣な顔をする。
「多分ですけど、帝国に拉致するかと。後押しします? 阻止します? 静観します?」
オフィーリアがご丁寧に指を1本ずつセリフに合わせて折っていくのをその場の全員が凝視した。
「どうしますか?」
ゆっくりと目の前の美少女が首を傾げた。
×××
「あー、つまり、あのアレでも帝国は無問題だから、ということなんだね?」
椅子のクッションを鳩尾の前に常備して説明を聞く王太子と、お茶のカップを持ったまま固まる王太子妃。
その眼の前で優雅に紅茶を飲みながら、笑顔のアンドリュー王子の膝に載せられているオフィーリア・・・
側近は緊急退避し、この場の4人だけで今後の事を話し合う事にした。
「帝国はこちらの大陸の常識は通用しない様な所があります。問答無用で力こそ正義ッ! みたいな感じなので・・・」
それ、君のことじゃない? と言いたいのをグッと我慢する王太子。
「ですので、無理に阻止するのは得策とは言い難いですね」
肩を竦めるオフィーリアとその彼女にデレデレする実弟を見比べ、更には自分の妻に目を向け、最後に天井に視線を向ける王太子。
「1番丸い解決方法は何なんだろう」
腕を組んで1人で悩む彼。
ちょっと可哀想である・・・
「ヒューイは最初は君に名前を貸す理由を聞いてここに来たんでしょ? その辺りは良いのかな? 罪はほぼ彼女自体は無いのも同然だけどね。全く関わりがなかった訳じゃ無いからね」
「今までの経過は全て共有しています。彼は何しろ賢いですから1歩先を考えて既に手を打っている可能性はありますね」
「何に対して?」
「ヴァルティーノ王国とスティール王国の両方です。後は我が国の中立派の不穏分子ですわ」
オフィーリアがカップをアンドリューに手渡すと、彼が代わりにそれをテーブルの上に戻した。
「今回の事で分かった事はそもそもスティール王国の食料不足と無計画な土地の乱開発が戦争の原因でした。次にヴァルティーノ王国が矛先を我が国の穀倉地帯に向けさせた」
「うんそうだ。でもヴァルティーノ側としてはスティールに近い国境沿いの町や村を略奪から守りたかったという背景がある」
頷くオフィーリアに、目配せをして先を促す王太子。
「私の家族全員が亡くなったのは元を正せば戦争が原因できっかけは先程の理由が主ですが、長引かせたのは我が国の裏切り者達が主な要因です」
「ああ。平和が長かったせいで組織の1部が腐ったな」
「ですが、王女はそれに関して深く関わっていたかというと、調査した結果そうではありませんでした。あの王族自体が贅の限りを尽くしていた為国民が疲弊していたのもそうでしたし、ウチの国との関税が他国に比べ安いため、海外からの宝飾品や調度品を入手しやすかったのも拍車をかけていますね」
息を1つ吐いて彼女は続ける。
「それと兄の死因は今回念には念を入れて再調査しましたが、結局馬車の事故でした。ですがこれも結局戦争のせいで国境の山道の整備が不十分だった事が原因です」
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