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53 坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、という訳でもない②
「戦争犯罪人は、全て法廷で裁判を受けますが、それは我が国の中でだけ。しかも自国の者達のみが罰せられるだけですわ」
「うん。残念ながら、他国の内政に迄は口出しは出来ないよ」
今はアバルティーダ国内の牢屋にいるワイアット・ボーフォートもサンドロ・ボーフォートもヴァルティーノ王国に檻送される事が決まっている。裁判はヴァルティーノで行われ、こちらからは罪状を送ることしか出来ないのである。
アンドリューが、徐ろにオフィーリアを膝から自分の隣に座らせ、彼女の肩を抱いた。
「彼女はそのせいで家族も、子供だった時間も失った。それは普通の貴族の令嬢には過酷と言っていいくらいの状況だったはずだ。だから俺は彼女とどうしても家族になりたいんだ兄さん。彼女を支えたいし共に居たい。今回ヴァルティーノの申し出を少しでも受け入れようと動いた連中は私怨だと言われようが、俺は許す気は無いよ」
オフィーリアが目を閉じて長い睫毛が白い肌の上に影を作る。
「ですが、我が国は死刑を撤廃しています。周辺諸国もそうですが。1番重い罪でも強制労働、後は医学進歩の為の被検体位でしょう。2度と要らぬ考えを持たぬように更生する機会を与えるというのが大義名分ですが」
オフィーリアは溜め息を付いた。
「他国の王族達の罪、他国民を蔑ろにしたり自分たちの利益を優先させ、平民の生活を圧迫したりする事は止められません」
「そうだな」
その場の全員が渋顔になった。
「罰を与えたい訳でも死刑にしたいわけでもないんだ」
「そうですわ。2度とそのような気にならないように戒めにする必要が有るのですわ」
そうオフィーリアが言った途端ドアをノックする音がした。
×××
「ヤッホイ、皆んなどうしちゃったの? お葬式みたいな顔になってるよ」
王太子の執務室にやって来たのはヒューイだった。
「皆んなの悩みの解決になるかどうかはわかんないけどさ、今度帝国が国際交流を始めた小国があるんだけど、こっちの大陸の国もこの国に手助けして欲しいんだよね。文化継承が大変でさ国際的に援助が必要な国なんだよね」
ニコニコと笑いながら部屋に入って来るなり全員に資料を直接手渡す。
「この国って、凄く閉鎖的で鎖国がやっと開放されたばっかなんだけどね。すごく重要な重金属とかが採掘されるんだよね。微量だけど、エネルギー値が高いのよ」
「エネルギー?」
「まあ、それは後で説明するよ。でさ、彼らの文化って特殊で廃れると彼等が滅びる可能性もあるから大変なの。あ、3ページ目ね」
全員が頁を捲り固まった。
「我が国も大使館を小さいながら建設してる。他国の分も請け負うよ? 何しろうちの国が一番近くだからねえ。役に立つ王侯貴族が国際親善大使として出向いて欲しいのさ」
その資料にはその民族独自の伝統的食文化がデカデカと大文字で書かれていた。
『人食』
と・・・・
「いやあ、彼らも高齢化でさぁ、柔らかいのが良いんだって♡」
コテンと首をかしげるヒューイ。
「貴族とか王族とかお誂え向きじゃない?」
彼の笑顔はオフィーリア以上に黒いと思ったのは単王太子だけではなかったらしい・・・
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