おかえりなさい

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おかえりなさい

 ドアを開けた先には、あたたかな光と愛しい笑みが待っていた。 「トキオさん、おかえりなさい!」 「うおっ……ただいま、結月」  まだ靴も脱がないうちに温もりがくっついてくる。俺の胸のあたりに顔を埋めながら、結月は息を吸い込んだ。柔らかな耳が垂れて揺れる。 「トキオさんの匂いだ……安心する」  胸がときめくとはこういうことを言うのだろうか。切なくて、苦しくて、息が詰まる。たまらない気持ちで俺も結月を抱きしめた。 「家に結月がいるとか、最高すぎて今も夢みたいだ」 「それは僕も同じです。まだ夢見心地で……でも、毎日が楽しいです」  俺の体にくっつけていた額を離し、上を向く結月。本当に幸せそうに目を細めるから、俺は追い打ちをかけられまた胸が苦しくなった。 「今日もお疲れ様です。撮影は順調ですか?」 「あぁ、順調に進んでる。結月もお疲れ様」  お互いの気持ちを知り恋人となった俺たちは、同じ時間を過ごすために同棲を始めていた。同棲と言っても、一緒に暮らしたいと言い出した俺の我儘を結月が叶えてくれたようなものだ。  俺が元から住んでいた部屋で今は結月と一緒に暮らしている。仕事から帰るとこうして結月を抱きしめるのが日課になっていた。 「今日も……大丈夫だったか?」 「はい、あれから来てませんよ」  濁した言い方だったけど結月はすぐにわかったらしい。俺を安心させるように頷いた。  結月にあんなことがあり、これからどうするかは二人で、そして結月が働く店の店長も交えて話し合った。危険な状況に晒してしまったことを店長は何度も結月に謝り、結月は店の裏方として働くことになった。  俺としてももう二度と結月に悲しい思いをして欲しくないし、恋人としても結月を独り占めしたかったから、ありがたいと思っている。 「トキオさん」 「ん?」  顔を上げた結月は俺を見る。大きな瞳が俺だけを映している。それだけで幸せが満ちていく。  俺も結月を見つめ返しながら次の言葉を待った。 「一人でお留守番寂しかったです……ご褒美くれませんか?」 「ご褒美?」  恋人になってわかったこと。結月は寂しがり屋で、密着するのが好き。  甘えるような、ねだるような口調に俺の笑みは深くなる。結月の恋人にしか見せない面を知れる度に喜びで心臓が破裂しそうになる。  瞼がおり、大きな瞳が隠れる。そこでやっと「ご褒美」を理解した俺は、結月の肩に手を置き体を屈めた。リップ音をたてて、柔らかな唇をついばむ。 「ん……」  一度では足りなくて、何度も何度も唇を吸う。結月も甘えるように体を寄せてきたから、俺はさらに結月を求めてしまう。  左手をふわふわな髪に埋め、後頭部にそえる。結月が苦しそうにしていないのを確認してから唇の割れ目を探り、舌を差し入れた。
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