5人が本棚に入れています
本棚に追加
『マテェエ。マッテクレェ……』
声のような風音がだんだんと情けなくなっていく。
『ハヤスギテ、オイツケ、ナイ』
『タノムカラァ、ノロワレテクレェ』
廃墟ホテルのフロントで、浮遊霊の俺は息を切らして倒れこんだ。なんで足がないはずなのに、俺はこんなに走るのが遅いままなんだよ。
肝試しの大学生3人組の言っていた、角部屋のバスルームで自殺した男とは俺のことだ。
以来、俺は浮遊霊として、この廃墟ホテルで成仏できずに彷徨っている。
『まさか幽霊になったのに、足が遅いせいで誰にも取り憑くことができないなんて』
最初のコメントを投稿しよう!