君の背後霊になりたい

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俺は完全に幽霊としての自信を失っていた。 背後霊になって誰かに取り憑かなければ、永遠にこの廃墟ホテルから出ることができない。 『死んでもなお、足が遅いせいで俺はこんな目に会うのか』 とぼとぼと角部屋のバスルームへ戻りながら、俺は生きていたころのことを思い出していた。 俺は足が遅かった。運動会のかけっこも、体育の100m走も、いつも最下位でよくみんなからからかわれていた。 友達からは走り方のフォームがおかしいらしい。身体が尺取虫のようにいろんな方向へ伸び縮みしているという。 俺はそんなつもりはなかったし、そんなフォームを直そうともしなかった。 やがて大人になって、会社に入って、走るスピードを意識しなくなった。足が速かろうが、遅かろうが関係ない。大人の世界に走力は必要ないのだ。そう思っていた。
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