レイ=グラッドの冒険の終わり

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――誰かを助けるのに理由はいらない。ならば、特に理由なく誰かが僕を助けてくれるかもしれない 大陸の最北東部に小さな町があった。そこに暮らす人々の暮らしは裕福とは言えず、行倒れた冒険者を理由なく助ける者は……当然いなかった。 冒険者と言えば、自ら危険を冒す愚か者――そのような印象を持たれることも少なくない。 少年はこれまで幾多の人々を救ってきたが、そのことを知る者はこの町にはいなかった。 彼は、時に無報酬で依頼を受けてきた。病気の母親を持つ少女のために、死の山に住むドラゴンを倒し、秘薬を作るための薬草を持ち帰ること――それが彼の最初の依頼だった。 ――あの子のお母さん、ちゃんと病気、治ったのかな 振り返らず、脇目も振らず、ひたすら人助けをしてきた。 そのような生き方をしていれば、いつかこうなると彼に教えてくれる者はいなかった。また、彼自身も視野の狭い人物だから、それに気づくには至らなかった。 永遠の眠りに近づいている冒険者――レイ=グラッドはその瞼を閉じないよう必死になるがあまり、白目をむきかけた変顔になっていた。 そこに通りすがろうとしていた黒装束のとんがり帽子が一人、立ち止まる。 まじまじと少年を眺めるようにした後、おもむろにノートを取り出し、羽ペンで何かを書き始めた。
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