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「あぁっ!」
少年は思わず叫んだ。
――レイ=グラッドの冒険の終わり。
「とってもいい絵だから、とっても高く売れそう」
「正気ですか……! いや、それよりもさっきのご麗人はどこに!?」
少年の問いかけに、魔女はすっとぼけるそぶりを見せた。
「あの人を助けたければ――」
魔女は壁にかかった箒を手に取り、またがった。いつの間にかとんがり帽子もかぶっている。
「――追いかけて」
部屋の中に嵐が巻き起こったかと思うと、窓の外に飛び出した。外に人がいれば、巨大な黒ガラスだと勘違いするかもしれない。
「こうらぁー! なーにをさわいどるんだ!」
宿屋の主らしき人が乱暴に扉を開けた。
「なんじゃこらぁ!部屋が無茶苦茶だぁ! あんたがやったんか!」
「違います! 黒いとんがり帽子の魔女がっ――」
「あの姉ちゃんか! あぁあぁ、こんなに散らかしちまって……おい兄ちゃん、責任取ってもらおうか!」
少年は度重なる理不尽にめげそうになるが、それどころではなかった。
「すみませんでしたぁ! 掃除洗濯皿洗い何でもします!」
すぐに宿屋のおじさんに義理を果たして、あの魔女を追いかける……そして、あの人を助けて――僕の冒険を終わらせてなるものか。
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