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大陸の最北東部から南東へと下り続けた。
魔女を追うのは簡単だった。それは、非常な痛みを伴う方法ではあったが、確実に追う方法があった。
「レイ=グラッドという名前を……ご存じですか?」
これを聞けば、一発で分かる――
「あぁ……もちろん知ってるよ! あの伝説の勇者……くくっ、レイ=グラッドだろう?」
「あのドラゴン殺しのレイ=グラッドでしょう? ――変顔のレイ=グラッド。ふふ……あれ、あなた何だか――レイ=グラッドに少し……」
「あら―、私も知ってるわよ。『レイ=グラッデの冒険の終わり』でしょ? 冒険者の人生の終わりを描いた名画。王国の宮廷画家も泣いて悔しがったってもっぱらの評判よー! あら……グラッドね。ヤダもう私ったら人の顔と名前を覚えるのが苦手で……あらやだあなた……レイ=グラッデが変顔をやめた時みたいな顔じゃないやーねー」
――この辱めを耐えた先に、あの魔女がいる。
少年は魔女を追いながら、色々なことを考えた――彼女はいったい何なのか。自分を助けてくれた白い服の女性はいったい誰なのか。あるいは、二人は同一人物で、白い女性は自分をからかうために魔女が変身した姿なのではないか。
会えば分かる――そう思いつつも、出会った時のことを思い返す。
どうしてあの人は僕の名前を知っていた?
それは魔女だったから。宿屋のおじさんも「あの姉ちゃん」と言っていた。
どうして僕を助けた?
人を助けるのに理由はいらないからだ。
どうして僕の似顔絵をあんな風に見せびらかしながら逃げている?
これが一番分からない。
いずれにせよ、会わなければならない――
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