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「違うところがあったら言っていい、と言いましたね?」
「あ、ああ。」
「まず、物語はおもしろかったです。」
「そうか。」
「でも…違う!」
急に興奮したように机をたたいて身を乗り出すハル。
その頬は紅潮していて怒らせている側なのに手を伸ばしたくなる。
「この物語の私はまるで肇さんの小説しか好いていないようではないですか!心外です!」
「お、落ち着け…。」
「大体私は男性というものが大嫌いです!
男というだけで仕事があるのにそれをさも自分がすごいことかのように威張る男性が本当に嫌いです!
私はそんな反吐が出るような男のもとに嫁ぐくらいなら本気で逃げようと考えていました。
でもそんな時肇さんと出会いました。
確かに肇さんの小説のファンです。
でも、それよりも肇さんと出会って自分にしかない力で人を幸せにしていく貴方に惹かれたんです。好きになったんです。
大体、好いてもいない人のためになんで私が色々としないといけないんですか。
傘だってどれだけ大変だったか!」
怒涛に流れ込んでくる言葉に目を白黒させる。
「そもそも、肇さんが人形をバラバラにするのを止めるのだって、確かにご近所さんを怖がらせたくないのもありますけど、少しでも、少しでも肇さんの世界の中に入りたかったからです!
肇さんだけ別の世界にいるようで寂しかったんです。」
しゅるしゅると声が小さくなっていくハル。
驚いた、の一言だ。
こうも自分の頭の中のハルと違うのか。
…寂しかったのか。
それを感じられなかった自分に嫌悪する。
言い過ぎた、と逆に下を向いてしまったハルにどう考えても今しかなかった。
上下に気を付けながら箱を取り出し、目の前に出す。そして蓋を開けた。
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