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「そいつとはもう別れたよ。過去のことをいちいち騒ぐなよ・・・」
なぜこんなに執着するのか理解できない。何度か抱かれたくらいで俺の恋人になったつもりか? 俺を自分だけのものにしようとするなよ。
この記事の出所もきっと女優Mサイドだ。写真の撮り方がおかしい。
俺が「婚約者ができたからもう会わない」と言ったから当てつけのつもりだろう。
俺に本気だと言っていたが、本気の恋ってなんだ? 毎晩同じ奴だけ抱いてたら飽きるだろ、普通は。
女は可愛い。
体は柔らかくて抱き心地が良いし、快楽で俺を満たしてくれる。
どんな女も少し構えば俺になびいてすり寄ってさえくる。
だから女を取っ替え引っ替えして、ワンナイトの関係が後腐れがなくて楽だ。お互いの性的な欲望だけ満たせればいいんだから。
結婚してくれとかあり得ないんだよ。ひとりの女に縛られたくない。俺の自由がなくなるだろうが。
麗花に嵌められて赴いたホテルでまさかの顔合わせ。なぜ俺が麗花と結婚しなきゃならないんだ? おかしいだろ。
それで、丁度居た暇そうな女を連行して急場をしのいだが、まさかそいつが男だったとは・・・
「おい、俺の話を聞いてるのか?!」
おっと蓮の存在を忘れてた。
まったくうるさいやつだな。
「わかったよ、その記事は俺が責任持って握り潰す。それで話は終わりか?」
「いいや、終わらない!」
まだ何かあるのか・・・面倒な奴だ。
「お前に婚約者がいたなんて初耳だぞ! さっき父さんから聞いて驚いた。美人だけど普通の家の娘らしいな。お前ともあろう男がなんでそんな・・・」
ああその話か。情報早いな。
「東大卒なら察しろよ。俺に前々から婚約者がいたと思うか?」
「まさか、豪、お前って奴は・・・」
「その場しのぎの偽物の婚約者に決まってんだろ」
「・・・最低だ」
蓮は額に手を当てうなだれた。
思ったとおりの反応だ。真面目くさった蓮には理解の出来ない行動なのだろう。
「だったら噂の女優Mと婚約すればよかったんじゃないのか?」
「あいつは嫌だ。芸能人だと後々面倒だろ?」
「じゃあその前に付き合ってたミスコン一位の女子大生は? あの子は結構したたかだったぞ。偽装婚約者にぴったりだったじゃないか」
「あいつは口が軽いから無理だ」
元カノの女子大生はたった一日で俺と付き合ってることをSNSで拡散した。俺が遊びだと散々釘を刺しておいたのにも関わらずだ。
「関係のない人をそうやってすぐに自分のいいように扱うな。お前は王様にでもなったつもりか?」
王様なんじゃない。周りが勝手に俺に媚びてきて、俺を王様に見せてんだよ。
だが、そんなことを蓮に言うのも面倒だ。
俺は「もう帰れ」と蓮を顎であしらった。
「あまり調子に乗るなよ」
蓮はよりによってこの俺に、ふざけた捨て台詞を残して去っていった。
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