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この店のオーナーである周は、知り合いの客を見つけるとご丁寧に愛想を振り撒きながら席についた。
「お前、今までに女何人抱いた?」
「えーっ、俺? 軽く10人?」
「その中で一番いい奴と逆にひでぇ奴教えろよ!」
「ひっでぇ女いたぜ? あのな——」
ノリの軽い御曹司たちに付き合わされて、ハイペースでアルコールを飲む。口を開けば自慢ばかり。仕事や金、女の自慢まで。そのどれもが低レベルな自慢話だ。
「豪、お前さ、女優の槙由衣夏とあれからどうなったの?」
周が週刊誌沙汰になるようなネタを堂々と訊いてくるから俺は嫌気が差した。こういうところから噂が立つんだろうが。
周りの御曹司たちが「えっ、マジで付き合ってたの?」「槙由衣夏を抱いたのかよ!」とうるさい。
「面倒だから別れた」
「はぁ?! もったいねー!」
何がもったいないだ。俺にああしろこうしろうるさい我儘女なんて一緒にいても疲れるだけだ。
「なぁ、見ろよ。あの店員美人じゃないか?」
御曹司のひとり(コイツの名前が思い出せない)がニヤケ顔で皆の視線を促す。
その先には笑顔で接客中の凜がいた。
「美人ってアレは男だろーが、あ…そう言えばお前男もイけたか」
なんだと!?
この好色そうで締まりのない顔の間抜け面め、お前ごときが凜に目を付けるんじゃねぇ!
「ちょっとキミ」
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