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人気のない通路のさらに隅へと凜を追い詰めた。
すっかり混乱している凛を俺は無言のまま冷たい視線で見下ろす。
そんな俺を見て怯えたのか、凛の綺麗な瞳が不安定に揺らいでいる。
「ぶつかっちゃって、転ばせて、スーツを台無しにしてすみません・・・」
「スーツだけじゃない。お前とぶつかって転んだときに腕時計に傷がついた。この修理費のほうが高くつくな」
腕時計の表面のキズを凛に見せると凛は青ざめた顔になる。きっと弁償させられるとでも思っているのだろう。
「俺はお前の正体がわかったんだ」
「しょ、正体、ですか……?」
「凛。お前、本当は男が好きなんだろう?」
俺は凛を見透かしてやろうと、凛に強い視線を向けた。
俺の言葉に凛はハッとした顔になる。明らかに動揺している様子だ。そしていたたまれなくなったのか、俺から目線を逸らした。
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