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今日は豪さんとの約束の土曜日。
僕は美蘭の力を借りて女装をした。ウィッグを被って、発表会用に作ってボツになった洋服があるからとダークブルーのワンピースを着た。さらに美蘭は「お兄ちゃんにはメイク必要ないけど」と言いながら簡単なメイクも僕に施してくれた。
「ね、お兄ちゃん。ここまでしてあげたんだから、私にも理由を聞く権利あるよね?」
やっぱり訊かれた。そうだよね、僕がどうして女装をして船上パーティーに行くのか気になるよね・・・
「友達に頼まれたんだよ。船上パーティーに参加したいけど、パートナーがいないとダメだから女装してパートナーのフリをして欲しいって」
「そうなの?! だったら私がパートナーのフリして行きたいっ!」
「ダメだ。僕が行く。約束したのは僕だから」
これはただのパートナーのフリじゃない。豪さんに合わせて、豪さんの婚約回避のための作戦を遂行しなくちゃいけない。
「豪華客船なんて楽しそうだもんねー。譲ってくれないか。いいな〜」
楽しむだけの船上パーティーだったら僕ももっと浮かれていられたのにな。
豪さんは決められた時間どおりに僕を迎えに来てくれた。
家の目の前はさすがに美蘭にバレるから、家から少し離れたところまで。
運転席から降りてきた豪さんは助手席側のドアを開けて「乗れよ」と僕を促した。
僕は豪さんの運転するダークグレーのマクラーレン720Sの助手席に乗る。
これ、きっと何千万円もする車だ。こんな高そうなスポーツカーに乗ったことなんてないよ。汚したらどうしようとか余計なことを考えちゃって乗ってて全然落ち着かない!
僕が助手席の椅子にちょこんと座っていると、運転席に座った豪さんが、僕に近づいてきた。
僕は息を呑む。この人はかっこよすぎるんだ。その美しい完璧な顔が僕に迫るだけでドキドキする。
豪さんは僕の身体を背もたれにドンっと押し倒して、そのまま僕に覆い被さろうとしてくる!
えっ・・・! 何?!
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