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13.慣れない関係
〜凛視点〜
「凛。遅いぞ」
「豪くん、ごめんっ」
今日は豪くんとデートだ。
豪くんは僕を家まで迎えに来てくれるって言ってくれたけど、家の近くのコンビニの駐車場で待ち合わせすることにした。
豪くんと恋人同士になったことは、美蘭にも圭くんにも内緒にしている。
だから、家の目の前まで迎えに来てもらうわけにはいかない。
今日は美蘭も圭くんも家にいたから、それとなく理由をつけて家を出るのに時間がかかり、約束の時間よりも遅くなってしまった。
「とにかく乗れ」
豪くんは助手席のドアを開けて僕に車に乗るように促す。
今日の豪くんは白いロングTシャツに黒いズボンというラフな服装だ。スーツ姿もかっこいいけど、リラックスした豪くんの姿もどっちもいいな、と僕は思う。
車に乗って、僕はシートベルトを締める。
運転席側から車に乗った豪くんは、いきなり僕の肩を掴んで車のシートに押し付け、覆い被さるようにして僕に迫ってきた。
こんなシチュエーション、以前にもあった。僕が初めて豪くんの車に乗せてもらったとき、船上パーティーに向かう前のときのことだ。あの時は、僕がきちんとシートベルトをしてなかったから、それを豪くんが正してくれたんだった。
でも、今日の僕はちゃんとシートベルトしてますけど!?
「凛、会いたかった」
豪くんはそう言って僕の唇に軽くキスをする。
待って! 挨拶みたいにキスされるのには慣れてないし、びっくりするよ〜!
僕は恥ずかし過ぎて思わず下を向いた。すると豪くんは僕のつむじにキスをして「可愛いな」と囁く。
それから豪くんはなんでもなかったかのように運転席に座った。
豪くんは挨拶の仕方もグローバルなのかな。
「豪くんは留学したことあるの?」
「いや、ないが・・・」
「そうなんだ…」
じゃあなんでさっき豪くんは僕にキスしたんだろう。
「なんで急にそんな話になる?」
「えっ? あ、僕の勘違い。ごめん、豪くん」
豪くんは「なんの勘違いだ…」と大きな溜め息をついた。
「あ! そうだ! 豪くん見て見て!」
僕は着ていたTシャツを勢いよく捲り上げた。胸とお腹がしっかり見えるように大きく大胆に。
「怪我はすっかり良くなったんだよ。傷痕はしばらく残ってたけど、それもほら、綺麗になってどこが怪我してたか分からないでしょ?」
以前僕が男たちに襲われたときに負った傷はすっかり良くなった。とっくに治っていたんだけどそのことを豪くんに伝え忘れていたから、僕は傷が治ったことを自慢げに豪くんに見せびらかした。
「ばっ…! お前っ! いきなり裸を見せるんじゃない!」
豪くんは慌てて僕の服を引っ張って服を整えた。
なんでそんなに慌ててるんだろう。別に海やプールに行ったら男は上半身裸でウロウロしてるのに。
「傷が治ってよかったな。でもわざわざこんなところで見せなくていいっ! だいたいそんなのベッドで確認済みだ。安易に裸を人に見せるな!」
「あ......うん......」
「あー! クソ! 俺の気も知らないで……」
豪くんはなぜかちょっと怒ってるけど、もっとちゃんと見て欲しかったな。心配してたから安心して欲しかったのに。ベッドでなんて......そっか......ちゃんと確認してくれてたんだね。
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