0人が本棚に入れています
本棚に追加
小太郎のエピソードはとどまるところを知らず、無駄に時間を使ってしまった。
私はまず、保健所に電話した。小太郎が行方不明になった日から今までの間に犬の新規保護はなかったらしい。
次に飼い主が置いた餌の場所を一通り回る。心配だからって、餌の置き過ぎだ。これじゃあ、お腹をすかして、家に帰ろうという気持ちも起きそうにない。どこも餌は無くなっているが、食べたのは野良猫かもしれない。それより、その近所の人に餌を食べに犬が来てなかったか、確認していく。
ペット探偵というのは怪しい人間と間違えられやすいので、近所の人と話すことで、安心させる効果も狙っている。
一ヶ所の餌場で白い犬を見かけた人がいた。その近所では犬のフンが落ちていないかも気をつけてみる。
「ねえ、おじさん。何してるの?」
公園で声をかけてきたのは小さな女の子だった。身近に子供がいないから年齢がよくわからない。小学校低学年だろうか。大きなピンクのリボンをつけている。
「犬を探しているんだ」
写真を見せる。
「ふーん、変な犬。おじさんの犬?」
「ううん、飼い主は別にいて、おじさんはその人に頼まれた探偵なんだ」
急に女の子の目が輝いた。
「本物の探偵?」
「ああ」
「じゃあ、その犬が事件の秘密を握ってるのね」
「いや、そうじゃなくて」
ああ、この期待に満ちた目には応えないといけないのかも。
「実はそうなんだ。ただ、内緒だよ」
女の子は大きくうなずいた。
最初のコメントを投稿しよう!