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俺はついていない。
普通、窃盗の初犯は執行猶予がついて、懲役刑になることはない。裁判の時に弁護士にそう教えてもらった。
それなのに懲役がついたのは俺に運がなかったからだ。
盗みに入った家に犬がいることは知っていた。だから、あらかじめ用意していた犬のおやつをそっと、差し出した。
それなのに、あのバカ犬。
おやつに大喜びして、大騒ぎしやがった。
家の中から男が出てきたので、慌てて突き飛ばしたら、爺さんだったので、簡単にこけてしまった。その時に骨折したらしい。それで罪に傷害が追加されてしまった。
おまけに警官が来たから、逃げようと暴れたら、その警官まで怪我をして、公務執行妨害まで追加。警官のくせに弱すぎないか?
本当についていない。
刑務所ぐらしでずっと、復讐することを考えていた。犬や爺さんはまあ、許そう。だが、警官の奴は許さない。
きっと、俺のことなんて、覚えていないだろうから、こっそり殴るだけで許してやる。
そう思っていたのに、休みなのか、交番にはいなかった。
人の目につかないように見張るのは難しい。三日目にやっと出てきたので、ホッとした。
相変わらず、ボーッとした顔をしている。
さすがに交番の中に殴り込む勇気はない。パトロールに出たところをこっそり、あとをつけていった。
ひとけがない場所に行ったら、その時がチャンスだ。俺は殴るためにちょうどいい石をポケットに突っ込んだ。
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