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契約は不動産会社を通じて行われたので、本人と直接会うことはなかった。また、この部屋の住人の下沼に対するものや下沼本人からの苦情は特になかった。三万五千円の家賃も毎月きちんと支払われていた。契約についても、保証会社を使うのではなく、兄が保証人になったという。
その後、藤崎が鯵ヶ沢を呼んだ。
「日記を見つけたので少し読んでみました。下沼はあの六人に対し、随分引け目を感じていたみたいですね」
下沼知は、サークル活動などを通じて彼らと交流を持つうちに、家庭環境などの違いなどを認識し劣等感を抱くようになっていたようだった。本人はそのことについてはっきりと劣等感という単語を使っているわけではなかったが、その感情について苦しんでいるようであった。
(続く)
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