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こいつ、マジで最悪。
最低。
超気味悪い。
人間失格、呪われろ、あたしは思いつく限りの悪口雑言を並べ立てる。
声には出さず、口の中でぶつぶつと。
「そういうの、やめた方がいいと思う。悪趣味」
「だけど需要があるんだもん。こういう動画がバズるってことは需要があるってことでしょ? みんな見たいってことでしょ。悪趣味なのはさ、こういうのを見たがる人たちだよ。安全な場所でかわいそうにと言いながら自分が生きていることを実感してるわけよ。自分じゃなかったことに安心して、自分が優位であると信じて、自分は幸せだと思い込もうとして。ほんと、こえーわ。自覚なしのその他大勢って暴力的」
言っていることはまっとうだが、そういうお前はどうなんだ。
そう言ってやりたいが、その顔を見るのが怖くて視線をずらす。
怖い。
なんで?
わけがわからないから。
理解不能だから。
痛いほど早くなる心臓の鼓動、ドックドックドックドック。
逃げなきゃ。
逃げなきゃ。
制御不能に暴れまくる心臓にかまう暇もなく、あたしはよろけながら走り出す。
エレベーターの方が早い。
そうか、とエレベーターホルヘ向かえば地下一階にランプがついていて「あああああダメだわ待てないわ」とエスカレーターに向かう。
迷惑顔な人をすり抜け「すみません、すみません」とエスカレーターの階段を駆け下り続けた。
振り返ることもなく、そのまま再び改札を抜けて電車に飛び乗った。
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