とべない、とばない、終わらない

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   ことん。    ベンチにスマートフォンを置いて女の子が立ち上がった。  さっきから何度か画面をのぞいてはセッティングの位置を確認していた。  何かを撮影する気らしい。  みんな気軽に。  映像を動画を、音声を、共有。  それは素晴らしい機能には違いないのだけれど……。  録画状態を示す赤いランプ。  プワアアアアン、電車が来る気配。  歩き出す女の子。 「あっ」  思わず背後から飛びついた。 「きゃっ。何するのオバサン」 「オバ……」  いや今はそれどころではなく。 「もうっ」  女の子はそのまますくりと立ち上がり、録画状態のスマートフォンを引っ(つか)んで階段を駆け下りていく。
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