呼吸

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『ここじゃない』といつも思う ここは相応しくないから ここではない『どこか』遠い場所に行きたいといつも願う ここは何もないから でも『ここじゃない』その『どこか』がこの世界にあるのかはわからない ただ盲目に信じているだけ 自分の居場所に違和感がずっとあった ここにいるための何かが自分には足りなくて それがバレないように必死だった だから心の中で叫んでた 遠くに行きたい ただただ遠くに行きたいと でもそんなことを心の中でしか叫べない臆病者だから 実際に行動することはできなくて 今もここにいる 情けないと自分でも笑えるくらいにそう思う 動かせる足はあるけれど使い方がわからない 行きたい場所はあるけど方向がわからない そんな子供みたいな言い訳にいつまでも縋り付いている わかってる 足を動かさないのは転ぶのが怖いから わかってる 場所を決めないのはたどり着けないのが怖いから だからいつまでもここで膝を抱えて顔を埋めてるんだ 目を瞑って耳を塞いで いつまでも遠いどこかを夢見てる こんな自分に泣けてしまうのはきっと落ち葉が騒がしい季節だからだ そしてこれからきてしまう季節に心が影響されているんだ こんな当たり前のことにいちいち振り回されていたら 身も心もいつか壊れてしまうだろう だから気にしなければいい 周りも自分もただ流されるままに生きていればいい 季節が変わるのと同じように この状況も感情もきっといつか消えてなくなる 長い時間の中で命も心も体も消えていくなら 考えることは放棄して軽くなろう そのまま浮かんで いつかは流れ着くその場所まで流されよう そう思っても苦しくなるのは 体に力が入って浮かべないから 水の中で息ができなくて苦しくなる その理由はわかってる 流れ着く場所なんてどこでもいい どこでもいいけど自分で決めたいんだ 望んだから選んだから今ここにいるんだと そう堂々と胸を張りたい そのために流されるんじゃなくて歩きたい ゆっくりでいい 転んでいい ヘタクソでいい 春は蝶々を追いかけて 夏は野良猫を追いかけて 秋は落ち葉を追いかけて 冬は星空を追いかけて そしていつか『ここじゃない』願った『どこか』にたどり着きたいんだ
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