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「長かったですね。あ、初めまして」
良い姿勢からの背中が見えそうなお辞儀をされて、思わず摘んだ花を手にしたまま、俺も直立する。
「僕、ここにいるあなたの事、ずっと見てたんです」
「え?」
見覚えの無い爽やかな顔面から学章へ視線を移すと同じ色だ。
「たまたま見かけてから、気になって」
驚いて声も出ない。誰かに見られてたなんて。
「い、いつから……」
「いつかは忘れましたけど、台風の養生シートは覚えてます」
うっそ! 結構序盤! ほぼ三年間、人にバレてた!
「最初は興味本位だったんですけど」
俺も! こいつの世話きっかけそんなもん!
「休み時間や放課後使ってまでこんな場所で生きてる植物を一生懸命育ててる姿にぐっときて」
逆! むしろこいつに時間潰して貰ってた!みんな年下でクラスに友達居なかったからね!
「毎年咲かないのに、心折れずに世話して、なんて心が綺麗な人なんだろうって」
美化! そんないいもんじゃ無い! 秘伝のタレ守るみたいな、もう若干意地の域だから!
「あの、キミ……俺の事、よく解ってない」
「その通りです。あなたの事知りたくて本当は声かけたかったけど、勇気が出なくて。でもずっとここで姿見るの止められなくて。で決めたんです。きっかけ、つかんだら話し掛けようって」
「きっかけ?」
「花が咲いたら、声かけよう、って」
二人で俺の手にある花を見つめた。
「流石に遅くても一年経ったら咲くと思ったのに、まさかこんなにかかるなんて。『はじめまして』のきっかけが」
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