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「やっと、咲いたぁ……」
放課後ふんわり開いた花弁をみて、身体の力が抜けしゃがみこんだ。
『長かったな。初めまして』
初対面の小さな姿に感動すら覚えて挨拶をした。
――高校一年の時、入院していた俺に見舞いに来た先輩が教えてくれた。この花の秘密と咲いている場所。
「お前にだけ、良い事教えてやるよ。この学校に恋の叶う花が咲くんだよ。ただし、三年に一度だけ」
聞いた時は半信半疑どころか、殆ど信じなかった。
だけど尊敬している先輩は至極真面目顔で『誰にも言うなよ』と俺に口止めをした。
「今のは俺が貰っていく。来年から頑張れよ。任せた」
『お大事に』と取って付けた一言を残して先輩は俺の病室から去って行き、学校からも卒業していった。
病み上がりの春。俺の二度目の一年生が始まった。久々の登校後、一目散に教えて貰った場所へ駆けつけた。
学校のなんで建てた? と噂の、人気の無い別棟の裏。
見るまで半信半疑だったけど、何故かすぐ解った。聞いた通り存在してた。草がぽつんと。
建物と塀に挟まれた所為で昼でも暗い日陰。俺にぴったりな場所。クラスに居ても皆年下で居づらいし、草もぼっちでシンパシーを感じた。
先輩は学校に来たくない俺の気持ちを見越して作り話をしたのかもしれない。それでもいい。
同じ学年でこの花の存在を知っているのは、二度目の一年をやってる俺独り。
万が一、二年・三年で知ってる人が居たとしても、花が咲くまで3年間。卒業まで面倒見られるのも俺一人。
俺はこの草のお陰で登校するのが苦じゃ無くなった。任された限りとことん面倒見てやる。
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