走る君を見て

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 初めて奏多君の走る姿を見たのは、中学二年生の時だった。運動会のクラス対抗戦で、私のクラスのアンカーが先頭を走る中、無茶苦茶な速さで追い抜いていく奏多君を見た時、自分のクラスが負けて悔しいよりも、なんてすごい人なんだって感動したのを覚えている。あれから三年、今も奏多君の走りを見ている。  放課後になり、部活動の時間となる。陸上部の私は、長距離部門のメンバー六人で、グラウンドの周りを二〇周する。グラウンドの北側一角は短距離部門のメンバーが練習をしている。このグラウンドはサッカー部も使っているけど、南の端の反面だけ使って練習をしている。全国大会にも出場した奏多君がいるから、陸上部はこの学校では立場が強い。でも、奏多君以外は普通だから、たぶん奏多君が卒業したら陸上部はまたグラウンドの隅っこにでも追いやられるんだろう。  自分のペースを守りながらグラウンドを走る。もうすぐ、奏多君達が練習するすぐ横を駆け抜ける。私は横を通り過ぎながら、奏多君の走りを見る。  奏多君の走りは、美しい。シャープで一切の無駄が無く全てのものを削ぎ落としたかの様な走りだ。その美しい走りの中でも私が一番注目しているのは、奏多君の顔だ。私はいつも走っている時の奏多君の表情が気になってしまう。
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