走る君を見て

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「いやいやいや。でも、俺、母親の事とか、もうどうでもいいから」 「うん。それはわかった。でも、奏多君速いんだから、走ったほうがいいよ」 「はぁっ」  奏多君は呆れたように私を見ながら、ため息をついた。それからしばらく首を傾げながら考え込んでいた。そんな奏多君を見ながら、私も何言ってるんだろうと考え込んだ。だけど、一つだけ、私はまた奏多君が走っている姿を見たいと思った。 「確かに、俺、速いよな」  そう言って顔を上げた奏多君の表情は、少し照れたような顔をしていて、可愛いらしくて笑った。 「そうそう、速いよ。速いってすごいことなんだよ」と言うと、奏多君は笑いながら頷き、「じゃあ、走るかな」と呟いた。私は安心した。私は、奏多君には走っていて欲しかった。 「じゃあ、私、練習戻るよ」  私は、そう奏多君に声をかけて、また練習に戻ることにした。 「おう。俺も、明日から部活戻るよ」 「はぁ? なんで?」  私は思わず振り返った。 「え? なんでって、走れって言ったの山田さんだろ?」 「いや、でも、まだケガ治ってないよね」
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