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奏多君は変な人を見るような目で私を見る。
「足はケガしてるけど、別に上半身鍛えたり、やることいくらでもあるよ」
「うわっ、真面目。まだケガしてるんだから、もうちょっとゆっくりしたらいいのに」
「はぁっ?」
奏多君は大きなため息をついた。
「なんか、走れって言ったり、休めって言ったり、本当に山田さんて、変だよね」
私は奏多君を勇気づけたつもりが、奏多君に思い切り変人扱いされることになった。
次の日から、奏多君は陸上部に戻ってきた。コーチもほっとしたのか元気が戻り、今までほっといたくせに私の練習にも付き合うようになり、それからは大変だった。だから私は奏多君にもうちょっとゆっくりしてほしかったんだ。
まだちゃんと走れるようになるのには時間がかかるだろうけど、これまで以上に上半身を鍛えたり、フォームを入念にチェックしている奏多君を見てたら、今まで以上に速くなる気がした。その時はまた、心ゆくまで奏多君の走りを見ていたい。奏多君の走りの謎は解けたような気がするけど、私の奏多君の走りへの情熱はまだまだ尽きないみたいだった。私は、これからもずっと奏多君の走りを見ていたかった。
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