走る君を見て

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「琉奈、ほんと、奏多君のこと好きだよね」 「ちょっと、何言ってるの」  隣で走っている由佳がまた見てるって顔をしている。 「あんた、動機は不純なのに、速いよね」  誰が動機が不純なんだ。確かに奏多君を見るために陸上部に入ったけど、長距離では関東選抜にも選ばれるくらい成績を残している。陸上部に入った時は当然短距離志望でもっと近くで奏多君の走りを見ていたのに、コーチに長距離の方が向いているからと、短距離部門から外された。私はそれなら陸上部を辞めてグラウンドの隅で毎日奏多君を見ようかとも思ったけど、それはキモ過ぎるので止めた。ただでさえ、ストーカーと冗談で言われてるのに、そうしたら本当にストーカーだと認定されてしまう。  練習が終わり、由佳とか何人かの女子部員で、たこ焼きを食べて帰ることにした。学校の近くのたこ焼き屋さんは、六個で二五〇円と、学生には優しい値段だ。 「今日も熱い視線だったね。毎日、毎日ご苦労さま」  また由佳が呆れた顔でつっこんでくる。 「奏多君も、琉奈の気持ちに応えてくれたらいいのにね。全然琉奈の事、気にしてなさそうだし」  美月が同情するように私の頭を撫で撫でする。 「いいの。別に私は奏多君の走りが見たいだけで、それ以上のことはどうでもいいから」
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