走る君を見て

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 奏多君が構えて、そしてスタートを切る。やっぱりフォームが美しい。研ぎ澄まされた緊張感がある。奏多君が速いからそう感じるのか、他の部員とは明らかに雰囲気が違う。他の短距離の選手も、真面目に頑張っているし、真剣な様子はもちろん伝わってくる。でも、奏多君から伝わってくるイメージとは全然違う。なんだろう、他の人からは怖さを感じない。ただ、走っているだけだ。もちろん、私だって、他の部員だって、それぞれの競技を真剣に頑張っている。だから、走っているだけで十分なんだと思う。だけど、奏多君は違う。奏多君が構えて走り出す瞬間、いつも、危ないって感じる。走り出した瞬間、壊れてしまう気がする。前は奏多君が全国レベルで速いから、そう感じるのかと思っていたけど、それは違った。全国大会に応援に行った時、他の選手の走りを見たけど、みんなすごくレベル高くて速かった。でも、怖さは感じなかった。確かに緊張感はびっくりするくらい伝わってきたけど、奏多君みたいに壊れるとは思わなかった。私は、それがどこから来るのか、毎日見て研究してるけど、まだ謎は解けなかった  部活が終わり部室の前で由佳達が出てくるのを待っていると、練習を終えた奏多君が歩いてきた。 「奏多君、もうすぐ全国大会だね」 「山田さん、お疲れ。山田さんもハーフマラソン出るんでしょ。頑張って」  
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