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「いやいや、私はただの市の大会だから。奏多君こそ今度こそ全国で一位取ってよ」
奏多君は少し考えるような表情をした。
「うーん、一位は無理だと思うよ。三人くらい俺よりタイム速い人いるし」
私は首を傾げる。
「奏多君、あんなに一生懸命練習してるのに、あんまり順位気にしてないんだね。なんか不思議」
「俺の場合は、走るのが義務なのかな。たぶん、求めているものがタイムとかじゃないんだ」
奏多君は、そう言うと男子の部室に入っていった。求めているものという言葉を聞いて、そういえば奏多君はなぜ短距離を始めたのかが気になった。
「あれ、雰囲気良かったじゃん」
由佳がにやにやしながら私に駆け寄ってきた。
「別にそんなんじゃないよ」
「またまた」
由佳はそう言うと、「何話してたの?」としつこく聞いてきた。どうも由佳は私と奏多君の関係を恋愛話にしたくて、仕方ないらしい。そんなに恋愛話がしたいなら、自分が恋愛すればいいのに、男子には消極的な由佳は、人の恋愛にばっかり首をつっこむ。でも、私には恋愛感情はない。だから、普通に話すし、特別に緊張もしない。
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