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理由はどうであれ、もう陸上部は私の生活の一部になっていた。だけど、奏多君の走りが見れないのはやっぱり寂しかった。
今日は由佳達とは別メニューで、外を走ることになった。私は市の大会のハーフマラソンにエントリーしてるけど、由佳達は出場しないから、私とは練習メニューが違った。本当なら大会に出場するメンバーを優先でコーチが練習を見てくれるんだけど、奏多君が本当に辞めるみたいで、コーチは毎日奏多君の家まで部活を続けるように説得に行っているらしく、この頃あまり練習に顔を出していない。
町中を走り、町の東側にある大きい公園の外周を回った。腕時計を見ると、結構いいペースで走っていた。この調子なら来週のハーフマラソンで目標タイムはクリア出来そうだった。ふと、公園の中を見ると、ベンチに座る男子が見えた。横には松葉杖が置いてあった。私は公園の中に入り、その男子に駆け寄った。
「奏多君、何してるの?」
「あれ、山田さん。どうしたの?」
「どうしたのじゃないよ。外走ってたら、奏多君が見えたから」
私は、少し息を切らしながら答えた。
「そうか、来週ハーフマラソンだよね」
奏多君はそう言うと微笑んだ。
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