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暴行事件
地下鉄の改札で、一人の日本人にの見える中年男の前に10代の5人の少年少女達が、立ちはだかり通行の邪魔をした。
男は避けて通り過ぎようとすると、一人少年が後ろから押してきた。
男はよろけて少女にぶつかりそうになったが、かろうじて避けた。
その時に、男は持っていたケーキの箱を落としそうになった。
「気を付けてくれよ」
男は振り返って少年に注意した時、少年の一人が殴ってきた。
ケーキの箱が通路に落ちて、潰れた箱からクリームとスポンジが飛び出した。
「そっちが悪いんだろう」
それが合図のように、他の少年も男を囲み殴りかかってきた。
「止めろよ」
男は殴りかかってくるのを避けた為に、バランスを崩した。
「おっとあぶえな」
少年が男の背中を突き飛ばした。
男は通路に突っ伏し、その背中を少年達が複数で蹴り上げる。
その光景を一人の少女が腕組みをしながら笑みを浮かべて、楽しそうに眺めている。
男は腹から声を絞り出し抗議をして、身を捩って抵抗しながら少年たちに停止を求めた。
少年たちはまるで男の身体をサッカーボールを蹴るように、止めるようには見えなかった。
男は側を通り過ぎる何人かに、すがるような掠れた声で助けを求めたが無視された。
「黄色い猿はここから出ていけ」
「お前たちにこの国に住む資格はない」
少年たちは、アジア系の人間を憎むように罵った。
「猿、チャイナはこの街に住むな」
「パンデミックはお前たちが起こした」
「俺たちの島で、商売をするな」
少年達は口々に罵り、集団で男を殴り蹴り暴行し続けた。
「頼むから、止めてくれ」
男の懇願は無視されて、地下鉄から通りに引き摺られていった。
外は暗くなり始めていた。
駅構内で始まった暴行は、通りに出ても続いた。
男は肘を使って這いずりながら周りに助けを求めたが、皆知らん顔で通り過ぎた。
男は助けを求めるのを諦めて、体を丸めて腕を組み必死に指を守った。
男はこのままここで死ぬかもしれないと思った時に、救急車のサイレンが聞こえた。
「やべー、逃げろ」
少年たちは走り去り逃げていった。
「ああ、助かった」
男はそう思った瞬間に、意識がなくなった。
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